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梶原

【港区コミュニティを科学する①】4 地道な努力


ヘルメット被っていこか

地活(ちかつ)のはじまり

平成24年10月~ 港区まちづくりセンター

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平成23年7月、大阪市政改革プランの中で、24年度中に全小学校下で地域活動協議会(以下、地活)の結成を目指すことが打ち出されました。平松市政下で素案が示された地活には、鳩山政権の『新しい「公共」宣言』に見られる“「公共」を「官」ではなく「民」につくり直す”という市民協働の機運が取り込まれ、橋本市政下では「サイレント・マジョリティ」の存在が強調されました。こうして、既存の地域団体である連合振興町会や社会福祉協議会(以下、社協)に多様な主体を加えた地活というプラットフォームが誕生しました。

地域活動協議会(地活)とは

おおむね小学校区を範囲として、地域団体・学校・NPO・郵便局・企業等により構成され、様々な地域課題に取り組むための仕組み。準行政的な機関として区長認定を受けている。

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ようこそ、先生

地活結成の支援がコミ協の急務となりました。僕は6ヵ月で都島区民センターの館長を引き上げ、港区まちづくりセンターの立ち上げに携わることになりました。各区に置かれたまちづくりセンターが、中間支援組織として行政と連携し地活をサポートします。

「こどもパラダイス」など港区民センターでの実績もあったので、港区役所には歓迎されました。区役所の方と一緒に地域へ出向き、色々な人を紹介したら、「地域活動の先生」と呼ばれるようになりました。

防災・防犯プラス

「福祉は社協でしょ」とまだ多くの人が思う中、僕は区長に「福祉もコミュニティなんです」と訴えました。一人でお年寄りが住んでいるとか、車イスの方がいるとか、近くにどんな人たちが住んでいるかを知らないと、困っている人を浮き彫りにできない。

地域コミュニティが担う「大きな公共」は、防災、防犯に加えて、福祉です。暮らしの課題が解決されることが、まちづくりです。この話を機に区長の信頼を得ました。

ヘルメット被って行こうか

連合振興町会は地活反対の渦中にありました。港区には11校下ありますが、多いところで3回の住民説明会を開き、区長と説明して回りました。

いつから区役所の回しもんになってん、どうせ市長が代わったら言うことも変わるんやろ。

各地で罵声を浴びました。「地域のことは地域が決める、市の体制が代わっても地域自治は変わりません」と言い続けました。

真面目な区長がヘルメット被って行こうかと言うほど厳しい会議でした。二人して怒られて怒られて、それでも理解してもらえるまで説明しに行きました。

協働のはじまり

住民説明会を経て、グループに分かれて話し合いました。地活の事業計画を作成するに当たり、地活を構成する各団体が年間どんな活動をしているか洗い出しました。

ある地域では、子ども会と女性会と老人会が別々に清掃活動をしていて、それぞれに掃除用具を買っていることが分かりました。他団体が同じような活動をしていることは知っていたけど、同じ地域団体とは言え、横の関係がなかった。どこも人手が足らず困っていたので清掃活動を一つにまとめ、用具も共有することになりました。

体感すること

この仕組みええわと気づいた勘のいい地活の会長さんは、テンポが早い。地活というプラットフォームをどんどん活用されていきました。

他区には、補助金の受け皿となるだけですから形だけ作って下さいと地活をスタートさせたところもあります。港区では、補助金の会計の透明性など原則を徹底的に説明しました。

近頃、大阪市でも港区が地域活動のモデルとしてよく取り上げられるのは、結成時の土台があるからだと思います。原則を理解した上で活動しているので、地活を体感として持っています。感覚があるから、今は話が早いです。

原点回帰

地活も7年目。港区、浪速区と多くの事業に携わってきて、あらためて思い返すのが「同好会」の姿です。「地活が何かをする、地活に期待する」のではなく、地活という場に小さな同好会がたくさんあり、その情報を地活が持っているというのをイメージしています。

自分の好きなことや得意なことをグループでする、まちセンは外の風を運びながらその小さな単位を育てていく、地活は情報交換や発表の場になる。僕はそんなふうにこれからのコミュニティを描いています。

ドラムもバスケットも10分や1時間では身に付きません。理屈では分かっていても、なかなかできないものです。3年だって、体得するには難しいかもしれない。体に覚えさせるには、長い時間がかかります。

まちづくりも同じです。

しかし僕たちまちセンは、ほんまに地域に定着するところまでは伴走できません。何年もかかりますから。だから繰り返し徹底的に原則を伝えて、どうやったらやりたいことができるか助言して、外部との関係をコーディネートします。

最近は、ぺちゃくちゃみんなで喋って何か楽しいことしましょう、と言うようになりました。(完)

落葉の物語 ザ・タイガース 作詞:橋本淳

長い坂道の 落葉の丘に

やさしいあの人は

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コートにつつんだ 愛のショコラーテ

温かいまなざしが

僕を待っています

二人で見つけた 小さな秘密を

信じておくれよ

すてきなすてきな 恋の物語

冬の坂道に 星がこぼれる

美しいこころが

忘れられません

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

 

第7号 【港区コミュニティを科学する①】4 地道な努力

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