此花区地域活性化支援事務所(このはなまちセン)の渡辺尚見アドバイザーに此花区のまちづくりについてインタビューしました。
此花区の特徴
巻き寿司の丸かぶりは此花が発祥と言われています。
区名は古歌「難波津に咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花」にちなんで名付けられました。
平成13年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がオープン。
大阪府・大阪市は現在、此花区の人工島「夢洲」へ統合型リゾート(IR)の誘致を目指しています。
渡辺 尚見 わたなべ なおみ
此花区地域活性化支援事務所(このはなまちセン)アドバイザー
平成24年11月此花区まちづくりセンター支部地域まちづくり支援員、平成30年此花区地域活性化支援事務所(このはなまちセン)地域まちづくり支援員兼アドバイザー補、平成31年より現職。
Q 今、特に力を入れていることは何ですか?
今年度は、SNSの情報発信に少しウエイトを置いています。各地活が地域の情報を自分たちで発信できるように、FACEBOOKなどの作成を支援しています。地域の方からの相談に対応できるようにまちセンの公式LINEアカウントも開設しました。
このはなまちセンでは、開設当初からFACEBOOK「このはなまちセン」を運営していますが、3年前に「このはなまち子」の名前で別アカウントを取り、地域の個人や何かの団体に所属する人とゆるくつながるようになりました。その方たちの一握りでも将来的に地活のSNS発信を担って下さったらいいなと思っています。
「このはなまち子」という仮想の個人を設定することで、地域の方々と知り合いやすくなり、繋がってみるとユニークな方が多いことが分かりました。なかには、此花区に引っ越してきて「おでん屋」を始め、お昼の1時から開けて、地域のふれあい喫茶などに行きづらい年配の男性たちの居場所になっているお店もあります。
COLOR.Sという区民ホールでダンスコンテストをやっているグループがあるのですが、もともとは、ネイルサロンで、ネイルのお客さんやダンス好きのママ友達とイベント部立ち上げて、地域イベントへの参加や「このはなマルシェ」を主催されている方もおられます。
SNSを通じて地域の方と双方向に繋がり合ったことから、みなさんにこれからも楽しく地域活動を続けてもらいたいという願いから「コノまちゼミ」という企画が生まれました。「コノまちゼミ」とは、ゼミナールのように少人数で双方向の活発な交流を行いながら、地域活動に関するスキルアップをめざす勉強会です。
今年度のテーマは「脱マンネリ」。ゲスト講師を迎えて他区の事例だけでなく、『MAKE IT! メイキット まちなか発想ゲーム』を使ったアイデア出し体験やSNSの活用方法などを勉強し、アイデアを形にしていく手法を体験してもらいます。
Q 今までで一番評価できることは何ですか?
「地活」というプラットフォームに若い人たちが加わり、その状況に皆が慣れてきたことです。
頑なだった年配の方々も徐々に新しい仕組みを受け入れられるようになってきました。
此花区には9つの地活があります。
そのなかの一つである梅香地活は古い町ですが若い人が多く、NPOや企業とも交流があります。
地活協設立後の盆踊りやさくらまつりには、プロの屋台ではなく、だんじり会やスポーツチーム、作業所など地活ができるまでは町会とつながりのなかった人たちに模擬店を出してもらうようになり、今では「出店したい」という団体が出てくるようになりました。
また、USJに程近い島屋地活ではここ10年ほどで高層マンションが増え、地域の小学校の児童数が1,000人近くに増えてきています。地域の環境が変わるなか、地活の総務や会計担当者に若手の方が関わるようになってきました。
地活の運営方針や地域イベント「島屋まつり」(注:令和元年に「しまやエンジョイカーニバル」へ名称変更)についても話し合いました。私はその議論の内容を一つずつ板書していきました。会議の終了後に皆さんが黒板の写真を撮っている様子を見て、手応えを感じました。
会議を重ねるなかで、自然と地域の方が板書を担当されるようになりました。今年の「しまやエンジョイカーニバル」では此花区青少年指導委員連絡協議会に協力を申し入れ、400名を超える参加者に対応します。
これまでのメンバーだけではフードコーナーも100人分を作るのが精一杯で、開会1時間で売り切れていました。青少年指導委員さんの協力を皮切りに、今後は他の地域団体も参画されるだろうと思います。
Q 渡辺さんがまちづくりに携わるようになったきっかけは何ですか?
大学で建築を勉強し、卒論では中央区谷町6丁目の空堀地域の町屋再生を取り上げました。
そこでのイベントや長屋再生のお手伝いを通じて、町や人との関わりの面白さを感じました。
卒業後は設計事務所で働きながら、卒論で取り上げた空堀地域の「からほりまちアート」の企画運営もしていました。町をモチーフにアーティストが作品を創り、昭和レトロな町並みとアートとの融合を楽しむというイベントです。
その後、まちづくりについて学びたくなり、大学院に進学しました。ゼミでは、行政や被災地での協働のまちづくりに関する事業やプロジェクトを行っており、そこでファシリテーターとして関り、ワークショップの手法を学びました。
知人のつながりで、地活発足と同時に此花区のまちセンで働くようになりましたが、私はやっぱり人が好きなんだと実感します。町の人と話をして、SNSをきっかけに新しい人ともつながって。
何かを作ることも好きなので、まちセンの新聞を発行したり、区役所と区民ホールに「地活の情報コーナー」を置かせてもらい、来庁された方に足を止めてもらえるよう手書きの壁新聞を掲示するようになりました。今は支援員さんに作ってもらうようになりましたが、区の広報での連載と連動し、できるだけ月毎に入れ替えを行っています。
他にも以前働いていた設計事務所の仕事も手伝っていて、今でも図面を引いていたり、大学で建築を教える仕事もしています。
最近はまちセンと学校で忙しくて設計事務所に顔を出せていないので、70歳になる所長の安否が心配です。“見守り”に行ってあげないと。
渡辺さんが作成した「地活の情報コーナー」
取材・文:梶原千歳
イラスト:阿竹奈々子
Comentários