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梶原

【浪速区×外国人】まちづくりの始め方


【浪速区】まちづくりの始め方

橋下政権下で大阪市は5ブロックに分割され、東西ブロックのまちづくりを大阪市コミュニティ協会(Cラボ)が、南北を社会福祉協議会、中央をコンサルティング会社が受け持ちました。

平成30年、中央に位置する浪速区まちづくりセンターの業務をコンサルティング会社から引き継ぎ、Cラボが担うことになりました。それを指揮したのが港区で地域活動協議会の立上げやその後の運営を成功させた金子明憲(現Cラボ研究室長代行)です。

 

「浪速区がめざすべき方向性の具体的なイメージ」

区民の方々による「自律的な地域の運営」を土台として、安定的・継続的な地域コミュニティの維持のための「次世代の育成」と防犯・防災の取り組みを主とした「安全・安心のまちづくり」の2つを大きな柱としています。

 

Q 新しく浪速区でまちづくりを担い、1年という短い期間で地域からの信頼を得て成果を上げられました。どのようにスタートされたのですか?

金子

「とにかく地域行事には全て行ってほしい」と最初のミーティングで支援員に伝えました。

地域活動協議会(以下、地活)が主催する子どもや高齢者向けの事業や季節ごとのイベント、町会長会議など全部です。

浪速区11地活の担当支援員を決めて分担し、行事が重なって支援員が行けない時は僕がフォローしました。加えて、区政会議や関係機関の会議、行事等にも出席しました。

浪速区まちづくりセンター(以下、まちセン)は、アドバイザーである僕と支援員3名の計4名体制でした。支援員は3名ともまちづくりは始めてでしたが、全員が市内に住んでいて浪速区の土地勘もありました。僕たちは、地域へ出て行って顔を覚えてもらいながら、地域ごとの課題に耳を傾けることに専念しました。

4月の着任時、挨拶回りをすると同時に、浪速区にあるいくつかの日本語学校を訪問しました。住民基本台帳(平成31年3月末日現在)によると、浪速区の人口に占める外国人住民の割合は13%、およそ8人に1人が外国の方です。

平成22年から27年までの5年間の増加率を見ると、浪速区は1.28倍と大阪市24区のなかでも断トツです。留学生と地域住民の交流の機会を増やし、多様な人々が共生するまちにしたいと思いました。

エール学園の日本語学校の役員さんに地域コミュニティのお話をすると、留学生たちは御堂筋の清掃活動に参加していて、その年はボランティアを200回やりたいと意気込んでおられました。同じ日本語学校のアークアカデミーの方も地域活動への協力を快く申し出てくれました。

浪速区の各地活にこの話をすると、大国地活の会長が「とりあえず、やってみようや!」と手を挙げられました。

会長は8月に行われる大国盆踊りに留学生を招待し、留学生たちは1ヵ月前の踊りの練習から参加しました。盆踊り当日の1曲目は河内音頭。20名ほどの留学生が地元の方と揃いの赤法被を着て円に加わり、ぴたりと息を合わせて踊りました。観客は唖然として、拍手喝采。

また、事前に企業回りもしていたのですが、当日はMEGAドン・キホーテ新世界店の方々がスーパーボールのブースを出展して下さいました。実はこの盆踊り、一時期途絶えていましたが、新しい面々が加わり見事に復活したのです。

盆踊りが一息ついたところで、会長は留学生に模擬店のチケットを渡し「今日はありがとう、何でも食べて!」と。留学生のなかにベジタリアンの方がいたのですが、「焼きソバ肉抜きで作ったって!」とスタッフに声を掛けられていました。

「とりあえず、やってみようや!」から留学生との交流がスタートし、浪速子ども食堂チェリーや地域清掃、防災訓練、意見交換会等、他のボランティア活動や事業参加へ波及し、平成31年1月には浪速区役所とエール学園との間で「包括連携協定」が締結されました。留学生や企業など、新しい人たちと地域コミュニティの接点を育むことが、区が掲げる「次世代の育成」の一歩だと思います。

僕は、留学生が浪速区に住む外国人と日本人の“通訳”になってくれたらと思っています。

中国やベトナムなど国ごとに緩やかなコミュニティがあるようですが、日本語ができる各国の留学生が同郷の外国人住民に「盆踊り、行けへん?」とか「ごみの分別方法、分かる?」とか、地域との掛け橋になれると思うのです。

地域の会館で盆踊りを練習

地域の会館で盆踊りを練習(アークアカデミーFACEBOOKより)

地域の盆踊りに参加する留学生

大国盆踊り

留学生の感想

・日本の方と一緒に盆踊りを何度も踊って、美味しい焼きそばやギョーザを食べながら楽しく交流できました。

・踊り方をしっかり教えて頂いたおかげで、上手に踊ることができました。

・とてもいい経験になりました。また来年も参加したいと思います。

・大国町の地域のみなさん、親切にして下さってありがとうございました。

Q 浪速区が掲げるまちづくりの2本柱は「次世代の育成」と「安全・安心のまちづくり」です。

 「安全・安心のまちづくり」については、どのようにアプローチされたのですか?

金子

まちの美化に取り組みました。「割れ窓理論」を知っていますか。浪速区は路上のポイ捨てや落書きが多く、これを楽しく解決して街頭犯罪を抑制することに注力しました。

 

割れ窓理論

窓ガラスを割れたままにしておくと、その建物は十分に管理されていないと思われ、ごみが捨てられ、やがて地域の環境が悪化し、凶悪な犯罪が多発するようになる、という犯罪理論。軽犯罪を取り締まることで、犯罪全般を抑止できるとする。米国の心理学者ジョージ=ケリングが提唱した。ブロークンウインドーズ理論。

[補説]

米国ニューヨーク市ではジュリアーニ市長(在任1994~2001年)がこの理論を応用し、地下鉄の落書きなどを徹底的に取り締まった結果、殺人・強盗などの犯罪が大幅に減少し、治安回復に劇的な成果をあげたとされる。

 

平成30年12月、「浪速区ごみゼロ大作戦!」を区役所と一緒に開催しました。まちセンでは普段からFACEBOOK「浪速区まちづくりセンター」やブログ「なにわにくらす」を活用して、頻繁に地域活動の情報発信をしています。

この時もFACEBOOKでごみゼロ大作戦!への参加を呼び掛け、「事前申込み不要・手ぶらでOK・いつ来ても帰ってもOK」と謳いました。そして清掃する地域にあるお店や企業には「ポスターを貼る・チラシを置く・参加する」のいずれかでの協力をお願いしました。当日の朝は本当に人が集まるのか少し心配でしたが、140名の参加がありました。

まちを挙げての清掃活動を行おうと思った時、すでに各地活には地域単位での清掃事業があったので、地域の方の負担が増えないように一般参加者を募ることにしたのです。留学生や企業の方、親子での参加もありました。清掃後には、地域のお店からパンと野菜スープが振る舞われ、冷えた体を温めながら参加者同士が労ったり、挨拶し合う場になりました。

清掃してすぐに解散ではなく、こういうちょっとした場を作ることが、次回の参加や今後の交流につながっていくのです。

区役所に集まった「浪速区ごみゼロ大作戦!」の参加者たち

区役所に集まった「浪速区ごみゼロ大作戦!」の参加者たち

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

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